【電書&コミカライズ】推しとは結婚できません!〜最強魔術師様の結婚相手がわたしだなんて、めちゃくちゃ解釈違いです!〜
「よく来てくれたわね、ふたりとも」


 とはいえ、早々と可能性を捨ててしまってはもったいない。実はとんでもない逸材かもしれないし、妹はエレン様のお相手にふさわしいかもしれないもの。わたしはニコリと微笑みかけた。


「そんな……お目にかかれて光栄です。わたくしたちはこの春から文官と騎士として働きはじめたばかりでして」

「あら、そうだったの」


 なるほど――――それでふたりはわたしにお近づきになりたかったらしい。そりゃ、今後の出世に関わるもの。偉い人間に顔を売るのは大事なことだ。


「これから皇城内で顔を合わせる機会も増えそうね」

「はい! 誠心誠意、務めさせていただきます」


 ふたりはそう言って深々と礼をする。残念、わたしが思っていたほど野心家ではないようだ。

 これ以上深い会話をする気がなさそうなので、気を取り直して次に行く。
 けれど、声をかけた誰もが当たり障りない会話をするばかりで、大した手応えを感じられなかった。


(難しいわね……。相手にその気がないのに時間を割くのはもったいないもの)


 なにがなんでもわたしに取り入りたいという人間は思った以上に少なかったようだ。
 それもそのはず。
 既にエレン様がわたしの結婚相手に選ばれたという噂が立っているし、我が国の女性は存外奥ゆかしい。

 そんなわけで、わたし自ら探りを入れることにした。


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