【電書&コミカライズ】推しとは結婚できません!〜最強魔術師様の結婚相手がわたしだなんて、めちゃくちゃ解釈違いです!〜
「もしかしたら、おまえと話したがっているんじゃないか? この間も敷地内でお見かけしたぞ? なんとなく視線を感じるし……」

「そんなまさか。既に皇室からお礼はいただいていますし、俺はあくまで捜索部隊の一員です。皇女様にとっては、数あるなかの一人に過ぎないはずですよ」


 皇女である彼女の周りにはあまりにも多くの人間が存在する。

 父親である皇帝陛下に、身の回りの世話をする侍女、護衛騎士、公務のサポートをする文官や、彼女の教育を担当している家庭教師など、名前をあげだしたらきりがない。
 ほんの一瞬関わっただけの魔術師を覚えているとは、夢にも思っていなかったのだ。


 けれど、その後もヴィヴィアン様は数日おきに魔術師団を訪れ、訓練の様子を少しだけ見学して帰るということを繰り返していた。その間誰に声をかけることもなかったし、なんなら本人は隠れて見学しているつもりだったらしい。

 ところが、ある日のこと、ヴィヴィアン様に気づいた師団長がよかれと思って声をかけた。すると、皇女様は「今後も訓練に励むように」と口にして、それ以降はめっきり姿を見せなくなってしまった。


「残念だったなぁ、エレン。愛らしい皇女様が見てくださっていると思うと、訓練に精が出たのに。もうここにはいらっしゃらないのかな?」

「――――そうですね」


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