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「今日は、私の高校の卒業式でしょ?」

「ああ」

「もう一つ、卒業しようと思って」

「何を?」

一が訊ねると、静音の顔が耳に近付いてくる。そして彼女ははっきりと言った。

「ずっと好きだったよ、一のこと。芽衣ちゃんと幸せになってね。幼なじみとして応援してるから」

「は?」

静音が自分のことを好きなど、一は想像すらしたことがなかった。一にとって静音は家族のような存在であり、異性として見ることはできなかったのだ。

だが、一から離れた静音の熱を帯びた目には涙が浮かんでいる。そんな中で静音は笑っており、その気持ちが本当なのだと一はわかった。

「静音、ごめんな……」

どれだけ近くにいても気付いてもらえない、その辛さを芽衣に恋をしている一はよく知っている。だからこそ、罪悪感のような重い感情が心に落ちてくるのがわかった。そんな一の肩を静音は叩く。

「やめてよ、そんな顔。もうこの気持ちにも卒業するんだから!……二人の結婚式の時、写真は任せてね?」

「気が早過ぎるだろ!」

ウェディングドレスを着た芽衣を想像し、一の顔は真っ赤に染まっていく。それを見て、静音は声を出して笑い、一も釣られて笑ってしまった。
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