lens ll
「一の顔、口にしなくても「芽衣ちゃんのことが大好き!」って書いてあるのがわかる。本当に好きなんだね、芽衣ちゃんのこと」

「ま、まあな……」

照れてしまい言葉を失ってしまう一だったが、カメラの中にある一の笑顔を見ていた静音の目が、どこか潤んでいることに気付く。

「静音、何かあったのか?今にも泣きそうなくらい、辛いことあったのか?」

一がそう訊ねると、静音は「な、何でもないよ!」と乱暴に目を擦り、走っていく。だが途中で静音は振り返り、笑顔で言った。

「コンクールのテーマ、「大好き」なんだ。きっとこの写真はそのテーマに相応わしいと思う!」

その時の静音は、どこか苦しげに見えたものの、必死に何かを追いかけているようで、一の目には輝いて見えた。

(こういう気持ちを感じた時、静音はカメラで撮りたくなるものなのか?)

今の静音は、もう一の知っている静音ではなかった。男の子に些細なことで揶揄われ、一に守られて泣いていた弱い女の子ではない。自分の道を見つけようとしている。
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