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全員が出て行く中、一は自分の椅子から動けず、ぼんやりしていた。その目は教室のある机に向けられている。この教室に朝入った時から空席だった机だ。

「静音ちゃんのこと、心配?」

芽衣に話しかけられ、一は「答辞、お疲れ。感動した」と返した後、首を横に振る。ここにいない幼なじみを探している理由は「心配」からくるものではないということは、自分が一番よくわかっている。

「心配じゃなくて、寂しいって気持ちが大きいのかも。今まで当たり前のようにこの教室で一緒にいたのに、卒業式はいませんなんてさ。なんか、静音が最初からいなかったみたいな気がして……」

「確かに、クラスメートが一人いないって寂しいよね。みんなで一緒に卒業したかったし」

一が素直な気持ちを言えば、それに芽衣も頷く。二人の目はまた、静音が座っていたはずの席に向けられていた。

静音はコンクールに一の写真を出した。するとその写真が賞を受賞し、審査員を担当していた世界的にも有名なカメラマンに声をかけられ、彼の事務所でアルバイトをすることになったと静音は嬉しそうに話していた。
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