モノクロの世界で、君が手を差しのべてくれたから
 再び、私の中のナニかが私にストップをかけた。


「何言ってるの? お母さん、お父さん。私、萌だよ?」


 誰からも必要とされない、「紗英」なんて死んでしまったことにすればいい。

「萌」の代わりでもいい、必要とされたいの……。

 すると、お母さんが私を抱きしめてくれた。


「えっ……お母、さん?」

 お母さんに抱きしめられたのなんて、何年ぶりだろう。
 もう全然覚えてないや……。

 いつも何か褒めるときには、萌のことをぎゅーって抱きしめてたのは覚えてるけど、同じように私を抱きしめてくれたことなんて一度もなかったよね。

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