モノクロの世界で、君が手を差しのべてくれたから
 本当は私もこうやって、抱きしめてほしかった。

 いつもいつも、萌ばかりで……私が何をしてもスルー。褒めてくれることさえなかった。
 お母さんもお父さんも。

 そんなに萌のほうが大事だった……?



 ――やっぱり、私は必要とされてなかったんだね。



「萌……そうよね。萌よね! 生きてるのは萌よ! お父さん」

「嘘だろ……本当に萌なのか……?」

 お父さんは少し半信半疑のようだけど、貫き通せば信じそうだ。

「うん、見ての通り……」

 なりすましてることに対して、まったく心が痛くないといえば、それは嘘になる。

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