モノクロの世界で、君が手を差しのべてくれたから
「その……紗英がいたら……喜ぶかもね?」

「ほんと? そう思う?」

「いや、知らないけど」

「ははっ、んだよそれ……」

 いつの間にか、「萌」として成瀬くんと普通に話せるようになっていた。
 本当の萌が生きてた時は、成瀬くんに対してどう接していたのだろう?

 雄輝くんに対しては、何となく見てたから知ってるけど、成瀬くんに対してはそんなに見てなかったから、もしかしたら……成瀬くんは違和感あるかもしれないよね。

(でもバレてる感じでも……なさそう)

 急に「紗英」の話を出してくるあたり、油断できないけど、茜以外にも「紗英」のことをちゃんと見てくれてる人がここにもいたんだ。

 そう思うだけで、なんか胸がキュンとした。

 雄輝くんのことは好きだったけど、さすがに今はもう、この気持ちは……憧れにすぎないのかもしれない。


 成瀬くんと一緒に帰るのは初めてだけど、楽しく感じていたのは嘘じゃなかったんだ。


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