モノクロの世界で、君が手を差しのべてくれたから
「萌も行くよな?」

 不意に雄輝くんからそう聞かれ、

「うん、せっかくだしね。四人で行こっか」

 と、私は無難な返事をした。

「萌、最近私になんか優しいよね? 紗英がいなくなるまで、すこ~しツンツンしてたけど」

「えっ、そんなことないと思うけど」

「それは俺も思ってた。萌、少し丸くなったっていうか……」

 雄輝くんまで……。

 ヤバいヤバい……!
 日が経つにつれて、私の中の「紗英」が出てきちゃってるのかもしれない。

 「萌」でいくって決めたんだから、しっかりとなりすまさないと――。

「まぁ……私も紗英が亡くなって、少し変わったのかもしれない」

「いいんじゃない? 今の萌も好きだよ」

 雄輝くん……そんなさらっと「好き」とか言わないでほしい。
 今の私は本物の「萌」じゃないんだから。

< 38 / 67 >

この作品をシェア

pagetop