モノクロの世界で、君が手を差しのべてくれたから
 そして、夏祭り当日。

 昨日、茜と電話で話した時に、浴衣を着て行こうという話になったため、浴衣を着て行くことに。
 でも、私は「紗英」じゃなくて「萌」だ。
 家には、ちょうど浴衣が何着かあったから、萌が着そうな浴衣を選んで待ち合わせ場所に向かった。

* * * 

 待ち合わせ場所に着くと、既に成瀬くんがいた。

「あっ、来た来た~! 萌ちゃ~ん!」

 成瀬くんは、両手をぶんぶん振って私を出迎えてくれた。

(ほんと楽しそうだな……成瀬くんは)

「お待たせ」

「うんうん、萌ちゃんの浴衣姿、めちゃくちゃ可愛いね! これはもう雄輝もメロメロだな!」

 メロメロって……久しぶりに聞いたよ、そのワード。

「もうすぐ茜ちゃんと雄輝……も来るかと」

 危ない。思わず「雄輝くん」と言ってしまうところだった。
 萌は付き合い出してからは、「雄輝」と呼んでいる。
 ……思い出せて良かったよ。

 そして、話しているうちにふたりもこの待ち合わせ場所にやって来た。

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