モノクロの世界で、君が手を差しのべてくれたから

「……っ」

 そう言えば、前に一緒に帰った日。
 現国の授業の話で、「紗英ちゃんのことばっか気になってた」とか言ってたっけ……。
 それってそういうこと?

 見てくれてる人はちゃんと近くにいたのだ。
 私自身が、そのことに気付けていなかっただけ。

「あの……この雰囲気にのまれて言うわけじゃないけど、俺……紗英ちゃんのことが好きなんだ」

「えっ!? 私のこと……?」

「うん。紗英ちゃんのこと見てたっていうのは、ほんとそのまんまの意味で、好きな人のことって目で追っちゃうだろ? だから、もしかしたら気づかれてるかもって思ってたけど、完全に俺の自惚れだったな!」

 なんて言ってゲラゲラと笑う成瀬くん。

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