モノクロの世界で、君が手を差しのべてくれたから
 だけど、何度思ったか分からない……。

『萌と私、ほぼ同じ顔だし外見だって似てるのに、なんで萌なの?』って。


 でも全然違ったね。萌はきっとこんな卑屈な人間じゃなかった。

 自信あって、堂々としてた。私にないモノを持ってた。

 雄輝くんはそんな萌に惹かれたんだろう。


「でも成瀬くん……私は成瀬くんのこと……まだその……」

「っだぁぁぁ! それ以上言わないでー! 分かってるから。好きとかそんな感情はないこと。さすがに俺もそれは気づいてる」

「……ごめんね」

「謝んなくていいって、ほんと。俺が紗英ちゃんのことをひとりの女の子として見てるってことを伝えられただけで、今は大きな一歩だから」

 そう言ってニコッと笑った成瀬くんは、嬉しそうな顔をしていた。

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