憧れのヒーローはヤンキー?いや、私の王子様でした
「卒業式は来るの?」
さすがに最後だし来るか。
理玖のお母さんとお父さんも晴れ姿を楽しみにしてるだろうし。
「!!理玖っ!私、挨拶してない!」
呑気に髪を乾かしてもらってる場合ではない。
理玖の彼女でもないのに家に来て、シャワーまで借りて大事な息子さんにドライヤーさせてるなんて…っ!
慌てて立ち上がり、どこにいるのかと理玖に目で訴えると手首を掴まれ、ソファに戻される。
そしてまたブォーとドライヤーを再開し始める。
「…あの、ご両親は今いないの?」
私の焦りが伝わっていない理玖に問えば、ドライヤーを止めてしれっと言い放った。
「ここ俺ん家。俺以外誰も住んでないから。」
えっ…。
言葉が出ない私を見てニヤッと笑った理玖は私の頭を前に戻して再びドライヤーを再開した。
それからはまた妙な緊張感が出てきて、何も話せない。
こんな高層マンションに1人暮らし…?
え?本当に言ってる?
でも、そう聞くとあの異常なインスタント食品の数に納得がいく。
……やっぱり理玖って良いところのお坊ちゃんだ。