憧れのヒーローはヤンキー?いや、私の王子様でした
本当の恋人
楽しいはずの冬休みはどんよりとした気持ちで始まった。
誘われたバイトはクリスマスケーキを売るバイト
クラスの友達と3人で目の前にずらりと並ぶケーキを売らないといけない。
幸いなことに全部じゃなくても2/3売ってくれれば嬉しいと店長さんが言ってくれていた。
「ケーキいかがですかー!」
わいわいとカップルが行き交うのを見てると思い出してしまう。
「彩ちゃん!ほら笑って!」
「…うん!」
今はバイト中
グッと堪えて笑顔を作る。
「1つですか?ありがとうございます!」
クリスマスイブの夕方にもなると更にカップルが多くなり、皆イルミネーションに向かっていた。
「すみません。ケーキ2つください。」
カップルに目を奪われていた私は目の前にお客さんが来ていることに気づかなかった。
「ありがとうございます!」
いけない。ともう一度気を引き締めてケーキを2つ渡そうとすると、
「あ、名前って書けないですか?」
「名前ですか?」
誕生日とかに乗ってるやつかな?
「お客様すみません!私たちバイトなので、できないんです!」
「そうですよね。すみません!いやー、友達の息子が元気なくて名前入りのケーキあげたら喜ぶかなって。」
「箱になら…。」
「彩ちゃん!…ん?箱ならペンで書けるか。」
「うん!それにこの方2つも買ってくれるから。」
「そうだね!名前書きます!お名前は?」
「りくです。あ、"りくくん大好き"でお願いします。」
「男性に大好きって言われても嬉しくないんじゃないですかー?」
「大丈夫。字はお姉さんだから。」
「ははっ!変な人ですね。」