千燈花〜ETERNAL LOVE〜
北山にて
「良かった沢山咲いているわね、ついでに葛根も摘んでゆきましょう。あっ、あと中宮様の滋養にもいくつか薬草を摘んでいきましょう」
野草探しは得意だった。宝物を探しているようで心が弾んだ。
「はい、そういたしましょう。燈花様は東国でも薬草採りをされていたのですか?」
小彩が体を地面に縮こまらせ草の根を必死でかき分けている。
「え?えぇ…たまたま知っていただけよ」
「そうですか、、。燈花様はいつもその髪飾りをつけておられますね、美しい紅色がお似合いです」
「ありがとう、この石は紅瑪瑙と言って大地が何千年もかけて作り出した自然の石なの」
「ウフフ、殿方から頂いたのですか?」
小彩がニヤニヤしながら言った。
「違うわよ~、母方の家系のもので代々娘たち に受け継いできた大切な家宝の石らしいのだけど、詳しい事は知らないの」
「ふ~ん、そうですか。見せてもらっても良いですか?」
「ええ、もちろんよ」
「凄く美しい紅色ですね、ん?模様ですかね?」
小彩は瑪瑙の髪飾りを手に取ると何度もくるくると回して見ながら言った。
「模様?」
「はい。これ橘の葉と実ではありませんか?」
「え?本当に?」
「はい、三枚の葉と大きな実が橘の木に見えますが…」
「そうなの?」
驚いた。今まで一度も気にかけた事も、じっくりと見たこともなかった。
「ありがとうございました。燈花様の大切なものでしょう、失くさないようにお気をつけ下さい」
「そ、そうね…」
小彩から髪飾りを受け取るとじっと見つめた。確かに以前から不思議だと思っていたのだ。現代からこの石だけが一緒にタイムスリップしてきたからだ。
唯一この髪飾りだけが私の本当の正体を知っているのね…
しばらくの間、時間がたつのも忘れ何も考えずに薬草取りに夢中になり草の根をかき分けた。
「燈花様、そろそろ帰りましょうか?雲行きも怪しいですし」
小彩に言われて気づいたが確かに見上げた空は暗く、冷たい風が山の上の方から吹き始めていた。
「そうね、戻りましょう」
小彩に促され立ち上がった時だ、数メートルさきの藪の中からガサガサと物音がして黒い大きな影のようなものが一瞬見えた。私は咄嗟に小彩の顔を見た。
「燈花様…見ましたか⁉︎な、何かいます…」
小彩も同じものを見たのだろう、震える声で言った。
「落ちついて、とにかく静かにゆっくりこの場から去りましょう」
必死で冷静を保ち言ったつもりだったが、足がすくんで動けない。さらにガサガサ、ガサガサと葉が擦れる音が聞こえた。すぐに獣の大きな鳴き声が山の中に響いた。
「ブヒィィィィィィ!!!」
突然草影から大きなイノシシが顔を出し、ギロリとこちらを見た。
「キャー!!!」
私達の悲鳴が山の中に響いた。
「燈花様、早く逃げて!」
小彩が叫び、私達は懸命に山の中を走り出した。
スローモーションのように足がもたついて上手く走れない。
ドスッ、、、
獣道を必死で走る途中、木の枝に引っかかり勢いよく転んだ。
「痛っっ、」
右足首に激痛が走った。痛くてとても起き上がれない。振り返ると草むらの十数メートル位奥にギロリと光るイノシシと目が合った。イノシシはこちらに狙いを定め今にも勢いよく突進してきそうだ。
もうダメだ…
両手で頭を抱えギュッと目をつぶった時だ。
「良かった沢山咲いているわね、ついでに葛根も摘んでゆきましょう。あっ、あと中宮様の滋養にもいくつか薬草を摘んでいきましょう」
野草探しは得意だった。宝物を探しているようで心が弾んだ。
「はい、そういたしましょう。燈花様は東国でも薬草採りをされていたのですか?」
小彩が体を地面に縮こまらせ草の根を必死でかき分けている。
「え?えぇ…たまたま知っていただけよ」
「そうですか、、。燈花様はいつもその髪飾りをつけておられますね、美しい紅色がお似合いです」
「ありがとう、この石は紅瑪瑙と言って大地が何千年もかけて作り出した自然の石なの」
「ウフフ、殿方から頂いたのですか?」
小彩がニヤニヤしながら言った。
「違うわよ~、母方の家系のもので代々娘たち に受け継いできた大切な家宝の石らしいのだけど、詳しい事は知らないの」
「ふ~ん、そうですか。見せてもらっても良いですか?」
「ええ、もちろんよ」
「凄く美しい紅色ですね、ん?模様ですかね?」
小彩は瑪瑙の髪飾りを手に取ると何度もくるくると回して見ながら言った。
「模様?」
「はい。これ橘の葉と実ではありませんか?」
「え?本当に?」
「はい、三枚の葉と大きな実が橘の木に見えますが…」
「そうなの?」
驚いた。今まで一度も気にかけた事も、じっくりと見たこともなかった。
「ありがとうございました。燈花様の大切なものでしょう、失くさないようにお気をつけ下さい」
「そ、そうね…」
小彩から髪飾りを受け取るとじっと見つめた。確かに以前から不思議だと思っていたのだ。現代からこの石だけが一緒にタイムスリップしてきたからだ。
唯一この髪飾りだけが私の本当の正体を知っているのね…
しばらくの間、時間がたつのも忘れ何も考えずに薬草取りに夢中になり草の根をかき分けた。
「燈花様、そろそろ帰りましょうか?雲行きも怪しいですし」
小彩に言われて気づいたが確かに見上げた空は暗く、冷たい風が山の上の方から吹き始めていた。
「そうね、戻りましょう」
小彩に促され立ち上がった時だ、数メートルさきの藪の中からガサガサと物音がして黒い大きな影のようなものが一瞬見えた。私は咄嗟に小彩の顔を見た。
「燈花様…見ましたか⁉︎な、何かいます…」
小彩も同じものを見たのだろう、震える声で言った。
「落ちついて、とにかく静かにゆっくりこの場から去りましょう」
必死で冷静を保ち言ったつもりだったが、足がすくんで動けない。さらにガサガサ、ガサガサと葉が擦れる音が聞こえた。すぐに獣の大きな鳴き声が山の中に響いた。
「ブヒィィィィィィ!!!」
突然草影から大きなイノシシが顔を出し、ギロリとこちらを見た。
「キャー!!!」
私達の悲鳴が山の中に響いた。
「燈花様、早く逃げて!」
小彩が叫び、私達は懸命に山の中を走り出した。
スローモーションのように足がもたついて上手く走れない。
ドスッ、、、
獣道を必死で走る途中、木の枝に引っかかり勢いよく転んだ。
「痛っっ、」
右足首に激痛が走った。痛くてとても起き上がれない。振り返ると草むらの十数メートル位奥にギロリと光るイノシシと目が合った。イノシシはこちらに狙いを定め今にも勢いよく突進してきそうだ。
もうダメだ…
両手で頭を抱えギュッと目をつぶった時だ。