千燈花〜ETERNAL LOVE〜
行ってしまった…
翡翠の指輪は見事なまでに私の指にピッタリとはまった。いくら大唐の商人から安く買ったとしても、それなりの値がしたはず…とにかく絶対になくさないように大切にしなくちゃ…
部屋に戻ると、急いで小彩を呼び一日の出来事を話し山代王からの贈り物の指輪を見せた。小彩は目を丸くして、
「まぁ、なんて美しい翡翠なのでしょう、はぁ~燈花様が羨ましいです」
うっとりとため息をついた。
「でも、翡翠はとても高価なものでしょ、やっぱり頂けないわよ」
と、私が答えると、
「せっかくの山代王様の好意をむげにするなんて大変失礼な事です。山代王様の面子が丸潰れになってしまいますから」
小彩が口を曲げた。
「でも、なんだか気がひけるわ…」
「出会った友好の証とおっしゃられたのですから、素直に受け取られるべきです」
小彩が口を尖らせいつになく強く言った。
確かにその通りではあるのだけど…
「…でも、本当に市でこのような高級な品が安価に手に入るの?」
「はい、確かにこのように高級な翡翠を以前はあまり見ませんでした。でも最近は大唐からの商人達が多数、都に来て商いをしておりますので、流通が開け安価に手に入るようになったのではないでしょうか?」
「そう…」
「とりあえず失くしてしまうと大変だから、指には、はめたくないわ」
と伝えると、
「では、絹糸でくみ紐を作り、指輪に通して首にかけたらいかがでしょう?」
「それなら安心ね、組紐の作り方を教えてくれる?」
「はい、もちろんでございます」
翌日、出来上がった組紐に指輪を通し、ほどけないようにきつく縛った。そして首にかけて、服の内側に見えないようそっとしまった。
これなら落とさないし安心だ…
次の日も天気は良く、乗馬の練習にはもってこいの日だった。その日からしばらく山代王との乗馬の猛練習の日々が始まった。乗れば乗るほど馬も従順になり、だいぶ上達したのが自分でもよく分かる。
「燈花もだいぶ上達したな、実は数日後に、兄上と王妃さまが宇陀まで行幸に行かれるのだ。もうじきに冬になる。雪のふる前に体を療養しにゆくのだ。急な話しだが一緒に参らぬか?兄上も王妃さまもそなたに会いたがっているし」
「大王様と王妃様がですか?」
「…わかりました。では身支度いたします…小彩も共に連れていって下さいますか?」
「もちろんだ、馬車を用意するゆえ、二人で乗ってきなさい」
宮に戻り小彩に話しをすると、
「まことですか⁉︎大王様の行幸にお供出来るのでございますか?」
目をパチパチさせて信じられないといわんばかりに喜んでいる。
「ええ、今日山代王様よりお誘いされたのよ、急な話しだけど、あなたは大丈夫?」
「もちろんでございます!大王さまは毎年この時期になると宇陀に行幸されるのです。あの辺りの紅葉がそれはそれは美しいそうです。山の麓には温泉が湧き、湯の効能で体の不調は治まり、傷等の治りも早いそうです。一帯は古代より王族の許しを得ないと立ち入れない神聖な土地になっております。山から流れでる湧き水も実に清らかで不思議な癒しの力があると聞きました」
「そうなの?いくら招待されたとはいえ、そんな神聖な場所に足を踏み入れて厚かましくないかしら…」
「大丈夫ですよ、大王様から直々に呼ばれたのですから心配はいりませんよ」
小彩があっけらかんと言った。
「あっ私、王妃様にお会いした事がないのよ。、粗相のないような衣を選んでくれる?」
「はい、明日、市に早速買い出しに参りましょう」
ウキウキ顔の小彩は楽しそうだった。確かに飛鳥の都に来てから一度も遠出をしていない。宇陀は現代にも通ずる土地名だが、同じ場所なのだろうか?まぁ、一つ言えるのは法隆寺のある斑鳩ではなさそうだ。そして同時に最大の謎である聖徳太子について思い出したが、もう彼は亡くなっているし、きっと話を聞いても人物の特定までは出来ないだろうと思った。
まぁ、今はその謎解きよりも自分の奇妙なこの運命の謎解きに集中しようと思った。
翡翠の指輪は見事なまでに私の指にピッタリとはまった。いくら大唐の商人から安く買ったとしても、それなりの値がしたはず…とにかく絶対になくさないように大切にしなくちゃ…
部屋に戻ると、急いで小彩を呼び一日の出来事を話し山代王からの贈り物の指輪を見せた。小彩は目を丸くして、
「まぁ、なんて美しい翡翠なのでしょう、はぁ~燈花様が羨ましいです」
うっとりとため息をついた。
「でも、翡翠はとても高価なものでしょ、やっぱり頂けないわよ」
と、私が答えると、
「せっかくの山代王様の好意をむげにするなんて大変失礼な事です。山代王様の面子が丸潰れになってしまいますから」
小彩が口を曲げた。
「でも、なんだか気がひけるわ…」
「出会った友好の証とおっしゃられたのですから、素直に受け取られるべきです」
小彩が口を尖らせいつになく強く言った。
確かにその通りではあるのだけど…
「…でも、本当に市でこのような高級な品が安価に手に入るの?」
「はい、確かにこのように高級な翡翠を以前はあまり見ませんでした。でも最近は大唐からの商人達が多数、都に来て商いをしておりますので、流通が開け安価に手に入るようになったのではないでしょうか?」
「そう…」
「とりあえず失くしてしまうと大変だから、指には、はめたくないわ」
と伝えると、
「では、絹糸でくみ紐を作り、指輪に通して首にかけたらいかがでしょう?」
「それなら安心ね、組紐の作り方を教えてくれる?」
「はい、もちろんでございます」
翌日、出来上がった組紐に指輪を通し、ほどけないようにきつく縛った。そして首にかけて、服の内側に見えないようそっとしまった。
これなら落とさないし安心だ…
次の日も天気は良く、乗馬の練習にはもってこいの日だった。その日からしばらく山代王との乗馬の猛練習の日々が始まった。乗れば乗るほど馬も従順になり、だいぶ上達したのが自分でもよく分かる。
「燈花もだいぶ上達したな、実は数日後に、兄上と王妃さまが宇陀まで行幸に行かれるのだ。もうじきに冬になる。雪のふる前に体を療養しにゆくのだ。急な話しだが一緒に参らぬか?兄上も王妃さまもそなたに会いたがっているし」
「大王様と王妃様がですか?」
「…わかりました。では身支度いたします…小彩も共に連れていって下さいますか?」
「もちろんだ、馬車を用意するゆえ、二人で乗ってきなさい」
宮に戻り小彩に話しをすると、
「まことですか⁉︎大王様の行幸にお供出来るのでございますか?」
目をパチパチさせて信じられないといわんばかりに喜んでいる。
「ええ、今日山代王様よりお誘いされたのよ、急な話しだけど、あなたは大丈夫?」
「もちろんでございます!大王さまは毎年この時期になると宇陀に行幸されるのです。あの辺りの紅葉がそれはそれは美しいそうです。山の麓には温泉が湧き、湯の効能で体の不調は治まり、傷等の治りも早いそうです。一帯は古代より王族の許しを得ないと立ち入れない神聖な土地になっております。山から流れでる湧き水も実に清らかで不思議な癒しの力があると聞きました」
「そうなの?いくら招待されたとはいえ、そんな神聖な場所に足を踏み入れて厚かましくないかしら…」
「大丈夫ですよ、大王様から直々に呼ばれたのですから心配はいりませんよ」
小彩があっけらかんと言った。
「あっ私、王妃様にお会いした事がないのよ。、粗相のないような衣を選んでくれる?」
「はい、明日、市に早速買い出しに参りましょう」
ウキウキ顔の小彩は楽しそうだった。確かに飛鳥の都に来てから一度も遠出をしていない。宇陀は現代にも通ずる土地名だが、同じ場所なのだろうか?まぁ、一つ言えるのは法隆寺のある斑鳩ではなさそうだ。そして同時に最大の謎である聖徳太子について思い出したが、もう彼は亡くなっているし、きっと話を聞いても人物の特定までは出来ないだろうと思った。
まぁ、今はその謎解きよりも自分の奇妙なこの運命の謎解きに集中しようと思った。