千燈花〜ETERNAL LOVE〜
心の行方
都に戻り数日した後、私たちは行幸で収穫した木の実や果実を持って小墾田宮の中宮のもとを訪れた。この日は支度に手間取った為、小墾田宮に着いた時にはお昼をとっくに回っていた。中宮は突然の訪問にも関わらず、喜んで迎えてくれた。
「中宮様、ご無沙汰しております。無事宇陀より戻りました」
「二人とも待っておったぞ」
中宮が目を細めて嬉しそうに言った。
「さぁ、座りなさい。二人ともまだ都に戻ってきたばかりだろう?宇陀は遠い。昔はよく薬草狩に赴いたがのう…」
「ドングリ、クルミ、柿、みかん、沢山の食物をお持ちしましたので召し上がってください」
小彩が声を弾ませながら言った。
「二人ともすまぬな」
中宮が優しく微笑んだ。
「大王や王妃とも一緒に過ごせたか?」
「はい!でも…それが此度の滞在では、色々とありまして…」
小彩が急に何かを思い出したかの様に口ごもった。
「色々と?」
中宮が眉をひそめ疑いの眼差しを向けたので慌てて付け加えた。
「はい、滞在中は天候もよく温かい日が続き周りの田畑や森での収穫も多く、実り多き良き年であったと、大王さまも王妃さまも大変お喜びになっておりました」
ここで私が口を挟まなければ小彩は全てを打ち明けるだろうと思いヒヤヒヤした。
「そうであったか、良かった安心した」
とりあえず無難に木の実拾いや、王妃から貰った簪の話などたわいもない話をしていると、コンコンと戸がなり、戸口の向こうで侍女が返事を待たずに早口で話し始めた。
「中宮様、ご歓談中に申し訳ございません、少しよろしいですか?」
「どうしたのだ?」
「実は安倍家紅衣様がお越しになっておられます。どういたしましょう?すぐにお通しいたしますか?それとも別の部屋でお待ちいただきますか?」
「紅衣が?ふ~ん…。何かあったのであろう、お通ししなさい」
「はい」
侍女のパタパタと廊下を走る音が聞こえた。
「中宮様、お客様でございますか?」
小彩が聞くと中宮が少し考えながら答えた。
「そのようだ、事前に連絡はなかったのだが、突然訪問してきたところを見ると、きっと急用なのだろう」
「では、今日はこの辺でおいとまいたします。また遊びに参ります」
「すまぬな」
中宮は残念そうに言うと別れを惜しんだ。私たちは挨拶をした後すぐに部屋を出た。部屋を出るとすぐに小彩が不思議そうに聞いてきた。
「燈花様、なぜ大王様からの申し出の事を中宮さまにお話にならなかったのですか?」
「まだ、自分の心がどこを向いているのかもわからないのに、お話出来ないわよ…」
小彩に対し良い質問よと思ったが、自分でも何故話さなかったのかわからない。避けたかったのかも、、、。事実、宇陀から戻って以来その件については考えないようにしていた。自分の気持ちがよくわからないし、茅渟王という保証を手放すのも少しだけ勿体無い気もした。もちろん断るつもりではいるが、適当な良い言い訳が全く見つからない、、。ため息一つして長い廊下をゆっくりと歩きはじめた。
「中宮様、ご無沙汰しております。無事宇陀より戻りました」
「二人とも待っておったぞ」
中宮が目を細めて嬉しそうに言った。
「さぁ、座りなさい。二人ともまだ都に戻ってきたばかりだろう?宇陀は遠い。昔はよく薬草狩に赴いたがのう…」
「ドングリ、クルミ、柿、みかん、沢山の食物をお持ちしましたので召し上がってください」
小彩が声を弾ませながら言った。
「二人ともすまぬな」
中宮が優しく微笑んだ。
「大王や王妃とも一緒に過ごせたか?」
「はい!でも…それが此度の滞在では、色々とありまして…」
小彩が急に何かを思い出したかの様に口ごもった。
「色々と?」
中宮が眉をひそめ疑いの眼差しを向けたので慌てて付け加えた。
「はい、滞在中は天候もよく温かい日が続き周りの田畑や森での収穫も多く、実り多き良き年であったと、大王さまも王妃さまも大変お喜びになっておりました」
ここで私が口を挟まなければ小彩は全てを打ち明けるだろうと思いヒヤヒヤした。
「そうであったか、良かった安心した」
とりあえず無難に木の実拾いや、王妃から貰った簪の話などたわいもない話をしていると、コンコンと戸がなり、戸口の向こうで侍女が返事を待たずに早口で話し始めた。
「中宮様、ご歓談中に申し訳ございません、少しよろしいですか?」
「どうしたのだ?」
「実は安倍家紅衣様がお越しになっておられます。どういたしましょう?すぐにお通しいたしますか?それとも別の部屋でお待ちいただきますか?」
「紅衣が?ふ~ん…。何かあったのであろう、お通ししなさい」
「はい」
侍女のパタパタと廊下を走る音が聞こえた。
「中宮様、お客様でございますか?」
小彩が聞くと中宮が少し考えながら答えた。
「そのようだ、事前に連絡はなかったのだが、突然訪問してきたところを見ると、きっと急用なのだろう」
「では、今日はこの辺でおいとまいたします。また遊びに参ります」
「すまぬな」
中宮は残念そうに言うと別れを惜しんだ。私たちは挨拶をした後すぐに部屋を出た。部屋を出るとすぐに小彩が不思議そうに聞いてきた。
「燈花様、なぜ大王様からの申し出の事を中宮さまにお話にならなかったのですか?」
「まだ、自分の心がどこを向いているのかもわからないのに、お話出来ないわよ…」
小彩に対し良い質問よと思ったが、自分でも何故話さなかったのかわからない。避けたかったのかも、、、。事実、宇陀から戻って以来その件については考えないようにしていた。自分の気持ちがよくわからないし、茅渟王という保証を手放すのも少しだけ勿体無い気もした。もちろん断るつもりではいるが、適当な良い言い訳が全く見つからない、、。ため息一つして長い廊下をゆっくりと歩きはじめた。