千燈花〜ETERNAL LOVE〜
愕然とした…そんなはずはない、昨日確かに中宮に会っている…私はその場でヘタヘタと座り込みうずくまった。どうしていいかわからない…小彩がそっと近づき私の体を支え起こした。
小彩と漢人に両脇を支えられながらヨロヨロと歩きなんとか部屋の中へと戻ると再び寝台に倒れ込んだ。私が落ち着いてきたのがわかると二人はこれまでの事を話し始めた。
そんな…嘘だ…
気がづくと部屋から飛び出し馬小屋から馬を一頭連れ出し、飛び乗っていた。
「燈花様!どこに行かれるのですか!燈花様!!」
後ろから小彩の叫び声が聞こえたが、振り返らずに無我夢中で馬を走らせ小墾田宮を目指した。
夕暮れ時なのか西の空は真っ赤に染まっている。どうしても信じられなかった…中宮様にお会いして、真実を聞かなければ…
ドンドンドン、ドンドンドン、
小墾田宮に着くと思い切り門の戸を叩いた。中はシーンとしている。
「開けてちょうだい!誰か!」
大声で何度か叫ぶと一人の中年の女が門から出てきた。女は一瞬疑うように上から下まで舐めるように見たが、目が合うと私の顔を思い出したのかすぐに笑みを浮かべた。
「橘宮の燈花様ですね?ご無沙汰しております」
「あなたは、この宮の侍女?良かった、中宮様は中にいらっしゃる?お会いしたいのよ、すぐに通してちょうだい」
私が背伸びをして無理やり屋敷の中を覗き込むと女が慌てて答えた。
「燈花様、どうか落ち着いてください。中宮様は十年以上前にお亡くなりになっているではありませんか。この屋敷には今、誰も住んでおりません。当時の侍女も、使用人ももうおりません。私は今日たまたま器を取りに来て…」
「そ、そんなはず…」
女を押しのけ強引に敷地の中に入ったが、人気はなくひっそりとしていてる。
美しかった中庭には雑草が生い茂っていた。
う、嘘でしょ…何かの間違いよ…私はまた屋敷から飛び出すと再び馬に飛び乗り走り出した。
もしかしたらあの場所にいらっしゃるかも…馬を走らせながら、小彩と漢人から聞いた話が頭の中をグルグルと回った。
「燈花様は、きっと長旅で疲れて混乱されているのでしょう。十三年前、燈花様が中宮様に会いに出ていかれた翌日、小墾田宮に呼ばれました。そして、燈花様がやむを得ない事情で急ぎ東国に帰り、しばらくは戻って来られないと中宮様から直接お聞きしました。突然の別れに、挨拶もできずにいた事を橘宮の皆が心苦しく思っておりました。ただ、いつの日か必ず戻ってくるから、その時はまた誠心誠意お仕えするようにと、中宮様より仰せつかっております。この十三年間の都の事情を何もご存知ないのですか?私はてっきり小墾田宮から便りが届いているものだとばかり…あっ、燈花様⁉︎どこに行かれるのですか⁉︎」
馬を走らせながら小彩の話を何度も思い返していた。
小彩と漢人に両脇を支えられながらヨロヨロと歩きなんとか部屋の中へと戻ると再び寝台に倒れ込んだ。私が落ち着いてきたのがわかると二人はこれまでの事を話し始めた。
そんな…嘘だ…
気がづくと部屋から飛び出し馬小屋から馬を一頭連れ出し、飛び乗っていた。
「燈花様!どこに行かれるのですか!燈花様!!」
後ろから小彩の叫び声が聞こえたが、振り返らずに無我夢中で馬を走らせ小墾田宮を目指した。
夕暮れ時なのか西の空は真っ赤に染まっている。どうしても信じられなかった…中宮様にお会いして、真実を聞かなければ…
ドンドンドン、ドンドンドン、
小墾田宮に着くと思い切り門の戸を叩いた。中はシーンとしている。
「開けてちょうだい!誰か!」
大声で何度か叫ぶと一人の中年の女が門から出てきた。女は一瞬疑うように上から下まで舐めるように見たが、目が合うと私の顔を思い出したのかすぐに笑みを浮かべた。
「橘宮の燈花様ですね?ご無沙汰しております」
「あなたは、この宮の侍女?良かった、中宮様は中にいらっしゃる?お会いしたいのよ、すぐに通してちょうだい」
私が背伸びをして無理やり屋敷の中を覗き込むと女が慌てて答えた。
「燈花様、どうか落ち着いてください。中宮様は十年以上前にお亡くなりになっているではありませんか。この屋敷には今、誰も住んでおりません。当時の侍女も、使用人ももうおりません。私は今日たまたま器を取りに来て…」
「そ、そんなはず…」
女を押しのけ強引に敷地の中に入ったが、人気はなくひっそりとしていてる。
美しかった中庭には雑草が生い茂っていた。
う、嘘でしょ…何かの間違いよ…私はまた屋敷から飛び出すと再び馬に飛び乗り走り出した。
もしかしたらあの場所にいらっしゃるかも…馬を走らせながら、小彩と漢人から聞いた話が頭の中をグルグルと回った。
「燈花様は、きっと長旅で疲れて混乱されているのでしょう。十三年前、燈花様が中宮様に会いに出ていかれた翌日、小墾田宮に呼ばれました。そして、燈花様がやむを得ない事情で急ぎ東国に帰り、しばらくは戻って来られないと中宮様から直接お聞きしました。突然の別れに、挨拶もできずにいた事を橘宮の皆が心苦しく思っておりました。ただ、いつの日か必ず戻ってくるから、その時はまた誠心誠意お仕えするようにと、中宮様より仰せつかっております。この十三年間の都の事情を何もご存知ないのですか?私はてっきり小墾田宮から便りが届いているものだとばかり…あっ、燈花様⁉︎どこに行かれるのですか⁉︎」
馬を走らせながら小彩の話を何度も思い返していた。