千燈花〜ETERNAL LOVE〜
蓮の花が咲く音は
朝の光が部屋の中を照らしている。目を開けたものの、ズキズキと頭が重く起き上がれない。
あぁ…頭が痛い…そんなに飲んだだろうか…昨晩は…どこに居たっけ…林臣様と話したような…
そんなことをウトウトと考えていた時、戸の向こうに小彩の姿が見えた。
「燈花様、起きられましたか?」
「えぇ、入って…」
小彩は大きな桶の中の水をこぼさないように慎重に歩きながら部屋の中へと入ってきた。チャポチャポと水の音が聞こえる。
「ちょうど今、目が覚めたの…喉がカラカラで…」
寝台から起き上がろうとした時だ、
「…イタタ…足首が」
今までに感じた事のない激痛を足首に感じ両手で被った。見ると普段の二倍以上に腫れあがっている。
「燈花様!大丈夫ですか⁈そのまま動かさないで」
小彩は桶を床に置くと慌てて私の体を支え横にさせてくれた。真っ赤に腫れた足首が脈打つかのようにズキンズキンと痛む。
「あぁ、嫌な予感…」
「恐らく折れていらっしゃるかと…」
小彩がためらいがちに言った。
「はぁ…全く自分が情けないわ…」
両手で顔を覆った。
「あとで都の医官が診察に来てくださりますので、それまでは安静にしていましょう。それと…昨晩の事を覚えていらっしゃいますか?」
小彩は桶の水で絞った布を私の足首に当てながら気まずそうに聞いてきた。記憶はいまだ曖昧だ…でも小彩の表情を見る限り、明らかに何かやらかしたのだろう…奈落の底に落ちていくように一気に気が滅入った。
「…昨晩は、お酒を少しのんだのよ。…そうしたら、いつのまにか桃林にいて…で、…林臣様に会った…ハッ!」
思わず両手で口を押えた。終わった…心臓が止まる寸前だ。小彩がすかさず返した。
「さようでございます。昨晩は林臣様の背に担がれてお戻りになられました。宮の者一同、心底恐れおののきました。しかも燈花様はあろうことか酩酊状態でした…」
一瞬で背筋が凍りついた。再び布団をかぶり目を固く閉じた。ど、どうしよう…よりによって林臣様いえ、蘇我入鹿に担がれたなんて…なんて私は愚かなの…。今更遅いがひどく自分を責めた。
「で、林臣様はなんて?」
そっと布団から顔をのぞかせて恐る恐る聞いた。
「それが、誠に不思議なのですが、足首が折れているから安静にして見張っておけ。とだけおっしゃったのです。いささか疲れているご様子でしたが、怒っているようには見えませんでした。逆に気味が悪くて…」
小彩が両腕を抱えて肩をすぼめながら言った。
あっちゃぁ~どうしよう。でも、もう済んでしまったことだし…まさか、殺されるなんてことないわよね…今からでも謝れば許してくださるかしら…
「とにかく燈花様、今は足首の怪我を早く治しましょう。林臣様の件はまたのちほど考えましょう」
「…そうね。あっ、それと…昨日…冬韻様も昼間いらっしゃったのよ…」
ためらいがちに伝えた。
「…はい、六鯨様から聞きました。燈花様の深酔いを拝見してなんとなく、お察ししました…なんとお声がけすれば良いのか…」
小彩が沈んだ表情でしょんぼりと言った。
「まぁ、もう少し様子を見るわ。山代王様は政務で忙しくてこの宮になど来ないだろうし、お会いしたとしてももう、過去の事だから…」
「燈花様…」
小彩は声を詰まらせるとしくしくと泣き出した。
「小彩泣かないで。これは運命なのよ、流れに身をゆだねるしかないわ。共に乗り越えてくれる?」
「もちろんでございます」
小彩は涙を袖で拭ったあと私の手をきつく握った。
いつの日か彼女には本当の事を話さないと…
小彩のすすり泣く声がしばらく部屋の中に響いた。
あぁ…頭が痛い…そんなに飲んだだろうか…昨晩は…どこに居たっけ…林臣様と話したような…
そんなことをウトウトと考えていた時、戸の向こうに小彩の姿が見えた。
「燈花様、起きられましたか?」
「えぇ、入って…」
小彩は大きな桶の中の水をこぼさないように慎重に歩きながら部屋の中へと入ってきた。チャポチャポと水の音が聞こえる。
「ちょうど今、目が覚めたの…喉がカラカラで…」
寝台から起き上がろうとした時だ、
「…イタタ…足首が」
今までに感じた事のない激痛を足首に感じ両手で被った。見ると普段の二倍以上に腫れあがっている。
「燈花様!大丈夫ですか⁈そのまま動かさないで」
小彩は桶を床に置くと慌てて私の体を支え横にさせてくれた。真っ赤に腫れた足首が脈打つかのようにズキンズキンと痛む。
「あぁ、嫌な予感…」
「恐らく折れていらっしゃるかと…」
小彩がためらいがちに言った。
「はぁ…全く自分が情けないわ…」
両手で顔を覆った。
「あとで都の医官が診察に来てくださりますので、それまでは安静にしていましょう。それと…昨晩の事を覚えていらっしゃいますか?」
小彩は桶の水で絞った布を私の足首に当てながら気まずそうに聞いてきた。記憶はいまだ曖昧だ…でも小彩の表情を見る限り、明らかに何かやらかしたのだろう…奈落の底に落ちていくように一気に気が滅入った。
「…昨晩は、お酒を少しのんだのよ。…そうしたら、いつのまにか桃林にいて…で、…林臣様に会った…ハッ!」
思わず両手で口を押えた。終わった…心臓が止まる寸前だ。小彩がすかさず返した。
「さようでございます。昨晩は林臣様の背に担がれてお戻りになられました。宮の者一同、心底恐れおののきました。しかも燈花様はあろうことか酩酊状態でした…」
一瞬で背筋が凍りついた。再び布団をかぶり目を固く閉じた。ど、どうしよう…よりによって林臣様いえ、蘇我入鹿に担がれたなんて…なんて私は愚かなの…。今更遅いがひどく自分を責めた。
「で、林臣様はなんて?」
そっと布団から顔をのぞかせて恐る恐る聞いた。
「それが、誠に不思議なのですが、足首が折れているから安静にして見張っておけ。とだけおっしゃったのです。いささか疲れているご様子でしたが、怒っているようには見えませんでした。逆に気味が悪くて…」
小彩が両腕を抱えて肩をすぼめながら言った。
あっちゃぁ~どうしよう。でも、もう済んでしまったことだし…まさか、殺されるなんてことないわよね…今からでも謝れば許してくださるかしら…
「とにかく燈花様、今は足首の怪我を早く治しましょう。林臣様の件はまたのちほど考えましょう」
「…そうね。あっ、それと…昨日…冬韻様も昼間いらっしゃったのよ…」
ためらいがちに伝えた。
「…はい、六鯨様から聞きました。燈花様の深酔いを拝見してなんとなく、お察ししました…なんとお声がけすれば良いのか…」
小彩が沈んだ表情でしょんぼりと言った。
「まぁ、もう少し様子を見るわ。山代王様は政務で忙しくてこの宮になど来ないだろうし、お会いしたとしてももう、過去の事だから…」
「燈花様…」
小彩は声を詰まらせるとしくしくと泣き出した。
「小彩泣かないで。これは運命なのよ、流れに身をゆだねるしかないわ。共に乗り越えてくれる?」
「もちろんでございます」
小彩は涙を袖で拭ったあと私の手をきつく握った。
いつの日か彼女には本当の事を話さないと…
小彩のすすり泣く声がしばらく部屋の中に響いた。