もう一度、君に恋する方法


__やだ、こんな紙袋大切にとっておくなんて。

 袋の中身を思い出して、ちょっとげんなりした。だけど、思わず笑ってしまった。力が抜けていく。

「こんなもの……か」

 今となってはこんなもの。だけど、あの頃は、「こんなもの」が宝物だった。
 大袈裟だけど、先輩に大切にされている証だと思った。

 その後、箱の中身がなくなると、この茶色の紙袋は当然パッケージと共にごみ箱に捨てられた。それを私はわざわざ拾い上げてこっそり持ち帰った。そうしたくなるほど、この茶色の袋は私にとって特別なものだった。その質感も、色も匂いも、どこにでもある、ただの茶色の紙袋なのに。

 胸がきゅっと締め付けられると同時に、頬が緩んだ。

 あの頃の気持ちは、どこへ行ってしまったんだろう。
 一緒に過ごす日々が、その一分一秒が、愛おしくてたまらなかったのに。一緒にいられる時間はもちろん、一緒にいられない時だって、切なさはあふれ、愛おしさを増すのは簡単だった。

 それなのに、今はどうだろう。その感覚は、どこへ行ってしまったんだろう。何も感じなくなってしまったのは、いつからだっけ?

 手に持ったままの映画の半券をもう一度見た。相変わらず真っ白だ。その半券に問いかけるように、じっと見つめた。


__恋することを忘れてしまったのは、いつ?


 先輩を好きになったあの日。
 浩介に恋をしていたあの頃。
 あの頃の、あの日の私たちには、もう戻れないのだろうか。

 そう思うと、切なさというより、絶望感が湧いてきた。

 真っ白になった映画の半券を、そっと傍らに置いて、再び封筒を手にした。

 きっと何かあるはずだ。何かが。
 確かに私たちが恋をしていた証が。
 そうしたら、もう一度……。
 もう一度あの頃の気持ちを取り戻せたら……。

 すがる勢いで封筒の中身を漁った。一緒に行ったイベントや旅行のパンフレット。テーマパークで拾った紙吹雪。持ち帰ったカフェのコースター。
 手に取るすべての物が、愛おしい。そのひとつひとつが、私の頭の中で、ほわりと温かな花を咲かせていく。
 だけど、ふと下半身に違和感を覚えて、私は慌ててクローゼットを出た。



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