もう一度、君に恋する方法
旅行に行くことが決まって、今まで浩介の身の回りのことをして時間を消費していた私も、とうとうバイトをすることにした。
初めての仕事や新しい人間関係は、想像していた以上に疲労をもたらした。それに加え、日々の授業や部活の練習というハードなスケジュールに、身も心も毎日くたくたになって帰宅する毎日を送っていた。
バイト先と学校の往復ばかりで、浩介の家に行く時間は格段に減った。浩介に会うのも、部活の時ぐらいだ。就活で内定を獲得し、四年間できちんと単位を取り終えた浩介は、アルバイトに精を出し、大学内にいるよりも、バイト先にいることの方が多かった。
お互い多忙なため、連絡もまともに取りあえていなかった。浩介から連絡は来るものの、私はそれに返信する気力も体力もなく、スマホを握り締めたまま朝まで寝落ちしていた。
なんとか時間を合わせて、旅行先と宿泊先までが決まったものの、現地で何をするのか、そのあたりの計画は無だった。
出発前日の夜中になってようやく、当日の細かい動きを決め始めた。
ある程度行きたい場所は決まっている。あとは、旅行日程にどう組み込んでいくのかを考える。
だけど、疲れ切ってそこまで頭が回らなくなっていた。
パソコンの上を指がカタカタと走る音を聞きながらリュックに荷物を詰めていると、いよいよ瞼が落ちてくる。その音の中に、時折浩介のゆったりとした声が心地よく混ざる。だけどよく聞き取れない。
「もう寝ようか?」
気づけば浩介の肩に寄りかかっていた。
「ううん、大丈夫」
だけどそう言ったそばから、記憶を失くした。