もう一度、君に恋する方法
翌朝目を開けると、後頭部に柔らかな感触があった。首の高さも、頭の収まり具合もちょうどいい。
外界からの光に迷惑げに瞼を上げていくと、浩介の頭が少し前のめりになって、今にも私の顔の上に落ちてきそうだった。目は閉じているのに、口が少しだけ空いている。
ぼんやりとした頭で把握したのは、私が頭を預けている場所が、浩介の太ももの上だということだった。
滑らかな皮膚が頬に当たっている。柔らかくて、ひんやりと気持ちいい。目の前はちょうどお腹の辺りで、そこに鼻先を近づけると、浩介の匂いが濃く広がった。顔を押し付けると、そのまま吸い込まれてしまいそうだった。
浩介の匂いが、温もりが、顔いっぱいに広がって気持ちいい。
「おはよう」
その声に思わず顔を離してしまった瞬間、寂しさが襲った。
「こんなとこで寝れた?」
おかしそうな顔で、浩介は聞いた。
「浩介も、こんな態勢で寝れた?」
「うん?」と目を閉じたまま、浩介は私の頭をなでる。頭を撫でられていると、その流れで瞼がまた落ちていく。
__旅行なんて、もういいや。このままこうしていたい。
ずっとこうしていたいと思うのに、「今何時だろ?」という浩介の声で現実に引き戻された。
だから私は、聞こえないふりをして答えなかった。時計を探すこともしなかった。
「やっば、10時だ。早矢香、行ける?」
「……うん」
返事はしたものの、なんだか体が重かった。その重たい体をゆっくりと起こすと、頭がきゅっと何かで締め付けられるように痛んだ。視界がかすかに白む。それが治るまで、私は頭を抱えて座っていた。
浩介はそんな私には気づかず、浮足立った様子で準備をテキパキとこなした。