もう一度、君に恋する方法
せっかくだからと、私が作ったご飯を食べて、お風呂まで借りた。幸い浩介の家に着替え一式もあった。
お互いの家の行き来をする間に、いつの間にか、お互いの家に、お互いの私物が混在するようになっていた。それはとても自然で、すっかり見慣れた日常の光景になっていた。
はじめこそ、浩介の私物がうちにあることが、どこかくすぐったかった。不思議だった。その逆もそう。浩介の部屋に、私の私物が置かれていることに、気恥ずかしさを感じた。だけど次第に、それが浸透して、大好きな人の生活の一部に自分の一部が溶け込んでいるみたいに感じた。それと同時に深まっていく関係性や気持ちは、とても穏やかで、安心感そのものだった。
このまま一つになってもいい。
一つになりたい。
頭の中は、ふわふわと気持ちよかった。
それなのに、
「少しずつでいいから、荷物、全部持って帰ってくれる?」
浩介は、そう言った。
私は理由を聞かなかった。聞くのが怖かった。その真意を言い渡されてしまったら、終わってしまうと直感的に分かった。
返事をしないでいると、「そっちにある俺の荷物は、もう捨ててくれていいから」と付け加えられた。
__そっち……
胸がずきんと痛んだ。
翌朝早く、あんな態度をとったにも関わらず、浩介は律儀に私を駅まで送った。電車の中は空いていて、とても静かだった。
自分の家の最寄り駅に着いたとき、学生服やスーツ姿の人たちがホームや駅前にごった返していた。私が駅に降り立った時間、それはちょうど、通勤ラッシュが始まる時間だった。
私の体に、残り香のような優しさがまとわりついていた。