もう一度、君に恋する方法
7、もう一度、君に恋する方法
「それで、どうなったわけ?」
優子の神妙な顔が、私のすぐ目の前にある。
優子に事の顛末を話しているところだった。
今日はお互い、子どもを夫に預けて外で会っている。
子ども抜きで優子と会うなんて、いつぶりだろう。正直家のことは心配だ。
アイスティーを一口ごくりとしてから、私は結論を言い渡した。
「つまり、お互い、同じ気持ちだったってこと」
「つまりそれはもう……」
そこで優子は言葉を切って、次の言葉を言い淀んでいる。だけどすぐに首を大きく横に振って、ついでに両手のひらを私の方に向けてひらひらと動かしながら無理に笑って言った。
「いやいや、ないでしょ、そんなこと。だってあの水野先輩だよ? 高校の時からずっと早矢香一筋で、早矢香のことしか見えていない、あの水野先輩だよ? その先輩が早矢香を好きじゃなくなるなんて。あの水野先輩が……」
「はいはい、落ち着いて」
私は慌てて優子の言葉を止めた。これ以上続けられたら、気恥ずかしさでこちらが倒れてしまう。
だけど優子の耳に私の声は届かず、相変わらず冷静さを欠いて詰め寄って来る。
「嫌だよ、私。二人が別れるなんて。颯ちゃんと俊ちゃんはどうなるのよ? あんなの本気で言ってたわけじゃないでしょ? もう一回、ちゃんと先輩と話し合って」
「優子、落ち着いてってば」
「これが落ち着いていられるわけないでしょ? 大事な友達と、尊敬する先輩の別れの危機に、口出しするなって言う方がおかしいよ」
「別れの危機でも何でもないから」
だんだんと声を大きくして、いつの間にか立ち上がっている優子を椅子に座らせた。
息を切らして不機嫌そうな顔の優子の目は、少しだけ充血している。その姿を申し訳なく思った。
私は椅子の背もたれに体を預けると、ふーっとカフェの天井にため息と一緒にその言葉を放った。
「恋は、炭酸ジュースに似てる……って」
「え? なに?」
背もたれに預けた体を起こして居住まいを正した。そして訝しむ優子の目を見据えて、私は続きを話した。