それは過剰で艶やかで 【完】
「口をあけるって、どうして……」
「いいからいいから」
いいわけがない。突然口をあけろと言われて素直に応じるような、そんな間柄ではない。
きゅっと唇を食み、軽く睨みつける。それでも翠はお構いなしに
「白川さんが戻ってくる前に、早くあけてください」
「あけない」
「あけてくださいよ」
「だから、理由をちゃんと」
その瞬間、ぐい、と顎を掴まれた。ひたりと吸いつく滑らかな左手に、肌が粟立つ。
――しまった。
気づいてももう手遅れで、翠の右手は唇のすぐ先までのばされ、ぽとりと口のなかに固形物を落とした。
反射的にとじた唇の先に、白い指先が触れる。立ち昇る蜜の香り。それに誘発されたように唾液がこみ上げ、固形物を溶かした。
めくるめく甘く、ほろ苦い世界がじゅわりと咥内に広がる。歯列のあいだも飢えた喉も、すべてが従順に染まる。
そして最後には蜜のようなペーストが、とろりと舌を包み込んだ。
「いいからいいから」
いいわけがない。突然口をあけろと言われて素直に応じるような、そんな間柄ではない。
きゅっと唇を食み、軽く睨みつける。それでも翠はお構いなしに
「白川さんが戻ってくる前に、早くあけてください」
「あけない」
「あけてくださいよ」
「だから、理由をちゃんと」
その瞬間、ぐい、と顎を掴まれた。ひたりと吸いつく滑らかな左手に、肌が粟立つ。
――しまった。
気づいてももう手遅れで、翠の右手は唇のすぐ先までのばされ、ぽとりと口のなかに固形物を落とした。
反射的にとじた唇の先に、白い指先が触れる。立ち昇る蜜の香り。それに誘発されたように唾液がこみ上げ、固形物を溶かした。
めくるめく甘く、ほろ苦い世界がじゅわりと咥内に広がる。歯列のあいだも飢えた喉も、すべてが従順に染まる。
そして最後には蜜のようなペーストが、とろりと舌を包み込んだ。