それは過剰で艶やかで 【完】
「ところで、喫茶店の子とはどうなの?」

「どうって……」

「白川さんから聞いちゃった。美鳥に告白したって」

 ああもう。息抜きに来たはずなのに、頭がくらくらしはじめる。

「違います。告白なんて、そんなものじゃないですよ」

 喫茶店でお茶でも飲みながら、仕事の相談を聞いてほしい。お茶も軽食もおいしいので、そちらも堪能してほしい。そして、ぜひぜひイケメンを美鳥さんにも見てほしい――そんなふうに白川さんに誘われたのがきっかけだった。

 実際、紅茶は驚くほどおいしく、最初の一口で引き込まれた。心地よい華やかな茶葉の香りに誘われ、身体ごと赤褐色の液体なかへ沈んでゆくような感覚。まどろむように、揺蕩うように、心と身体がほぐれてゆく。

 生まれてはじめてお茶に感動を覚え、ほうっと感嘆の息をもらした。

 美鳥さん、今日もお茶しながら話聞いてくれませんか? と白川さんに誘われるたび、ひそかに心が踊った。

 ストレートティー、レモンティー、ハーブティー。いろいろと巡り、ミルクティーに落ち着いた。
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