それは過剰で艶やかで 【完】
「もしかして山名さん、あの喫茶店に行ったんですか?」

「うん。白川さんがイケメンイケメンって言うし、美鳥に告白したって聞いたらますます気になっちゃって。いやー、眼福だったわ。ああいうきれいな顔の子って、ほんとうにいるものなのね。ご両親の顔、見てみたい。いつか親御さんに会ったら、ぜったい写真に撮って見せてね」

「おもしろがってますよね」

「おもしろがらずにいろっていう方が無理じゃない?」

 勘弁してほしい。翠だけでなく後輩からも先輩からもおもしろがれているなんて、もはやおもちゃだ。

 日光浴休憩はちっとも気が休まらず、席に戻ればエアコンはさらに温度が下げられ、部長以外の社員はちいさく震えていた。

 人知れず、エアコンの操作パネルへ向かって指をのばす。

 おも、ちゃじゃ、ない! 心のうちで叫びながら、上向きの三角形のボタンを三度押してささやかな抵抗をした。
< 19 / 76 >

この作品をシェア

pagetop