それは過剰で艶やかで 【完】

　デパートでお弁当でも買って帰ろう。せっかくの半休、なにかいつもと違うことをしたい。

　駅に直結したデパートの地下へと足を進める。いつ来ても色とりどりで活気あふれたこの空間は、自然と食指が動きだす。フルーツののったデリ風サラダ。ひとつずつ丁寧につくられたことが伝わる手鞠寿司。分厚い分厚い、カツサンド。

　なににしようかと考えていると、先週キッチンを掃除したときに見つけたカレーを思い出した。山名さんの出張土産のご当地レトルトカレー。賞味期限が迫っていて、冷凍庫には冷ご飯もある。サラダだけ買って帰ろうか？　カツを買ってカツカレーにするのもいいかもしれない。

　考えあぐねいた結果、サラダだけ買った。セロリとグレープフルーツのサラダなんて、自分ではぜったいに思いつかない組み合わせ。

　早く帰って冷ご飯を冷凍庫から出して、さっとシャワーを浴びて――と帰宅してからの一連の動きを考えていると、紅茶のような香りがふっと漂った。

　オレンジだろうか。柑橘系の爽やかさの混ざった、弾けるような香り。