それは過剰で艶やかで 【完】
「距離が、近いと思うんだけど……」
ふたたび靴音が鳴り、さらに距離が縮まった。白い手がすっとのばされる。
「だから、距離がっ」
ぎゅっと目をつむると、やわらかな感触を頬に感じた。二度三度、やさしく撫でられる。
瞼を震わせながら目をひらくと、翠は頬や髪についた雨粒をタオルでぬぐっていた。耳がじんと熱くなる。
いったいなにを想像したのだろう。ふたりきりだからといって、ここはお店で相手は子どもなのに。
ぱちりと視線がぶつかり、翠は笑うように口をひらいた。
「目、つむってましたけど。なにされると思ったんですか」
「……ゴミが。目にゴミがはいって痛かったから」
あまりに苦しい言い訳だな、と思っていると
「どこですか」
ぐっと顔を近づけ、両目を覗き込まれた。
翅のように繊細に長い睫毛。琥珀色の瞳に捕えられた身体が汗ばみ、胸の奥が燃えるように熱くなる。
嘘だとわかっているくせに。ゴミなんて、嘘だとわかっているくせに。騙された振りをして、こうして揺さぶりをかけてくる。
ふたたび靴音が鳴り、さらに距離が縮まった。白い手がすっとのばされる。
「だから、距離がっ」
ぎゅっと目をつむると、やわらかな感触を頬に感じた。二度三度、やさしく撫でられる。
瞼を震わせながら目をひらくと、翠は頬や髪についた雨粒をタオルでぬぐっていた。耳がじんと熱くなる。
いったいなにを想像したのだろう。ふたりきりだからといって、ここはお店で相手は子どもなのに。
ぱちりと視線がぶつかり、翠は笑うように口をひらいた。
「目、つむってましたけど。なにされると思ったんですか」
「……ゴミが。目にゴミがはいって痛かったから」
あまりに苦しい言い訳だな、と思っていると
「どこですか」
ぐっと顔を近づけ、両目を覗き込まれた。
翅のように繊細に長い睫毛。琥珀色の瞳に捕えられた身体が汗ばみ、胸の奥が燃えるように熱くなる。
嘘だとわかっているくせに。ゴミなんて、嘘だとわかっているくせに。騙された振りをして、こうして揺さぶりをかけてくる。