それは過剰で艶やかで 【完】
 山名さんはすっくと立ちあがり、彼女たちの元へ向かう。

「お疲れ様。そろそろ会議じゃないの? あと、さっきもらった資料がおかしかったんだけど。あれじゃ使えないよ」

 黄色い声はぴたりと止み、すぐに合唱のように「山名さん、お疲れ様です」と返した。がらりと変わる空気。自分という存在がすうっと消えてゆく。

「すいません、すぐにチェックします」

「山名さんも会議に参加してくれませんか? 居てくれるだけで心強いんですよね」

「そうそう。いつも頼りにしちゃって悪いんですけど、お願いします」

「はいはい、わかったわかった。ざっくりでいいから進捗状況を教えて」

「はあい」

 遠のいてゆく足音。鈍い音を立てる扉。重く湿った風。白い日差しのなか、自分だけが完璧な黒にのみこまれた。
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