それは過剰で艶やかで 【完】

 ――この辺りでよく見かけるイケメンをコンビニで見かけて、ちょっと尾行してみたんですよ。そしたら喫茶店の裏口に入っていって。おふたりは行ったことあります? 窓がステンドグラスで、なかはアンティーク家具っていうのかな。ちょっとシックな感じの喫茶店なんですけど。あの人、店員さんなんですかね。お店に行ってナンパしてみようかな。私、ギャルソンの格好ってけっこう好きなんですよね。

 オムライスを頬張りながら、白川さんはちっとも悪びれずに言った。子うさぎのようなかわいい顔をして、なかなか大胆だ。

 いっしょに話を聞いていた山名さんは、「やってること犯罪者予備軍っていうか、犯罪」と呆れ顔だったけれど、それでも白川さんは「続報があったらお伝えしますね」とマイペースに笑顔で言った。

 続報が伝えられたのはそれから二日後だった。

「美鳥さん、メニュー決まりましたか?」

「ああ、うん」

「翠さん、注文お願いしまーす」

 白川さんが手をあげると、それに気づいた翠は軽く頷いた。さほど広くない店内で、手足の長い翠はいつも器用にくるりと立ち回る。その姿には、ときおりコンパスを重ねてしまう。
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