それは過剰で艶やかで 【完】
「ところで白川さん、お昼のことだけど」

 こほん、と軽く咳払いして切り出すと、白川さんはくるりとカールした睫毛をしぱしぱとしばたかせた。

「休憩もとれないくらい忙しいなら、こっちに作業を振ってくれても」

「なに言ってるんですか。美鳥さんは美鳥さんのお仕事をしてください」

「でも、休憩はやっぱりとらないと」

「大丈夫です。いつもじゃないですし。今日だけですよ」

 白川さんは数か月ほど前からうちの部署に加わった。未経験者ではないものの、会社によって勝手は異なるし、周りの人間とも一から関係を築いていかなきゃいけない。そういった意味ではまだまだ手探り状態だろう。知識と経験があればすんなりとすべてがうまく回るというわけではない。

「E社さん、急にサイトの仕様を変更してほしいって、なんなんですかね。指一本でちゃちゃっと変えられるとでも思ってるんですかね? ほかに影響が出ないか調査する必要だってあるし、エンジニアに伝えるこっちの身にもなって欲しいですよ。まあ、それをどうにか調整するのが私たちの仕事ですけど。美鳥さん、よく何年もE社さんとやってきましたよね。私ならぶち切れてます」

「まあ、これでもよくなった方だから」

「えっ、前はもっとひどかったんですか?」
< 7 / 76 >

この作品をシェア

pagetop