それは過剰で艶やかで 【完】
 問いかけに頷くと、走馬灯のようにこれまでのことが駆け巡った。

 事前に伝えたことを聞いていないと言われ、金を払ってるんだからさっさとしてくれと言わんばかりに急かされ、社内のエンジニアに頭を下げては睨まれた。板挟みとはこういうことか、と痛感した。

 白川さんが言うように、頭がぷつりと切れそうになったことは幾度となくあった。けれど、そうしたところで事態はなにも変わらない。とにかく粛々と動いて、先回りして、同じ失態は二度としないと自分に誓った。

 そうやって三年間、走り抜けてきた。気づけば眉間には皺が刻まれかけていた。

「私だって、相手がクライアントなら我慢できるんですよ。でも、内部だと……なんていうか、もう少し協力的になってくれたっていいじゃないですか? こないだ鮫島(さめじま)さんに、もっとうまくやってくれ、こっちは他の仕事だってあるんだ、ってネチネチ言われたんです。そっちだってこないだミスしたくせに。お言葉ですけど……ってここまで出かかっちゃいましたよ!」

 白川さんは水平にした人差し指で喉元を叩いた。
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