Kahlua Milk 〜Hiding Gray 君の瞳に隠されて〜

☆ゴールだよ


…っ…





わ…ぁ…


涙が出た

そこに広がるのは、何枚もの素敵な写真を並べても出会えないくらい、美しい光景

黒と青とオレンジと黄色
全ての色を含めた空を完璧に反射した穏やかな湖
富士山のシルエットの底から覗く太陽
散々焦らしておいて、顔を出した瞬間から、徐々に世界に光を与える
その経過が、はっきりとこの目で見える


「言葉にできない」という言葉がぴったり


この感情をどう表現したらいいのだろう

言葉にできなくて、写真や動画では味わえない感動
その風景は、私を立ち尽くさせ、声を奪った

このために、私たちは待った
口を動かすのも難しいほどの、投資寸前の寒さと戦った

途中のドンキで思いつくだけ買い溜めた防寒グッズは、1度の暖かさも感じさせない
それでも思いつくだけ手に取って、カゴに入れて、買い集めた
ユウがお会計を済ました後、半分分の料金をユウに押し付けたけど、一切受け取らなかった
この状況が、初めて会った時と重なった
あの時も、都内のドンキだった
ユウは、頑なに断り、女の子に1円も出させなかったんだ

湖で、寒さのため起こそうとした焚き火
レポート用紙全部使い切ったのに、火を起こすことに成功したのはもって5秒

厳しい寒さが続いて

私たちは湖で1人で来ていた同い年の男の子と出会い親しくなった
男子2人が焚き火を起こそうとする中、私の身体は寒さに負けていた
震え、動けず、表情筋も動かない
凍える私に、ユウは、私の毛布の上から自分用の毛布で私を包んでくれた

「かけてな、俺は寒くねーから」


30センチ以内の距離にあるユウの顔
私を包み込む動作
もう口も動かないのに、私の心臓は早く動く

ユウも寒いはずなのに…
でもユウからの毛布を遠慮するほどの余裕は、その時の私にはなかった
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