Kahlua Milk 〜Hiding Gray 君の瞳に隠されて〜


途中で帰りたいとも思った

寒くて死にそうで、本当に怖くて


でも、来てよかった
あなたはこれを見たくて、見せたくて、ここまで来たんだね

ちょっと責めたりしたけど、こだわる理由がわかったよ


「綺麗…」


やっと出た言葉はそれしか言えなかった
ずっと見ていても飽きない
手袋をわすれてかじかむ手
でも、手袋を取りに戻るのも惜しいくらい、ずっと見ていたい

丸い光が出て来てくれる前は、たくさんの人が集まっていて、今年初めての日の出を首を長くして待っていた


なかなか出てきてくれなくて、日の出の時間はとっくに過ぎてるのに、かすかな赤色だけが、期待を高める一方だった
周りもイライラし始めた、その時に。

キラッと目の端で光った

一度顔を出したら早いもの
5秒後には、太陽は私たちの目の前に、完璧な光景を作り上げていた

取り憑かれたみたいに目が離せなくて
しばらくぼーっと見ていた
どんな嫌なことも、全部吹っ切れた


チラッと横目で見たユウも、同じように見つめていた

何もかも忘れ、ずっと見つめていた

ユウ…

ありがとう

出会って約1年

今年も、よろしくね


***

「じゃあな」

朝になって、疲れ切った私と男の子は、電車で帰ることにした

ほんとはもっと一緒にいたかったけど…さすがに体力も限界

ユウは、行きたいところがあるらしくて、残るらしい
体力あるなぁ…


次会うときまで、バイバイだね


『お疲れ様、ありがとう』という意味を込めながら握手した後、ユウは去ろうとしながらも私を見て、なんとなく悲しそうな、なにかやり残したような表情をして、しばらくその場に立ったままだった
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