私の人生を変えてくれた人  ~もし君が生きてたら~ 前編

「…………っ」

「物心ついた時からあれで生活してるんだよ………
 香音にとってはあれが当たり前」

「…………そう……だよな…………」

「香音には難しいんだよ
 出来ないことを教えろって言っても
 普通が分からないから
 みんなと何が違うのか分からないから」

「………でも……全然違った」

「香音にそれが分かるわけないだろ
 記憶がないんだから
 香音にとっては当たり前の世界なんだよ
 あれが」

「………そんなの……辛すぎるだろ………」

「………そんなこと言っても香音の目は戻ってこない
 だから俺達がサポートするしかないんだよ
 俺達が気づいてあげるんだよ」

「………………………」

「香音も………普通の見え方を知ってたらもっと言えてたと思うよ
 何がしてほしいのか
 ただ………知らないから………分からないから言えないんだ
 普通の見え方は………香音の想像でしかないから
 多分…………本来とは違った見え方を想像してるよ」

「…………例えば?」

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