天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
入籍から三日目、暁月さんが帰宅するその日、オフィスを出るとたまたま添田さんと会った。彼女はこれから航空保安大学時代の同僚との食事会があるらしく、駅まで一緒に向かうことにした。
添田さんは仕事から離れても基本クールだけれど、今も「こっちに来て困ったことはないか?」と気遣ってくれる、とてもいい人。皆に的確な指示を出す姿はもちろん、オフの時も素敵で私はすっかりファンになっている。
そんな彼女は、空港事務所を出てターミナルビルに向かって道路を渡ろうとしたところで「あ」と声を発した。彼女の視線の先を追うと、こちらも眼鏡をかけたスーツ姿の男性がいる。
品のよさそうなイケメンさんも、添田さんに気づいてふわりと微笑む。
「あれ、添田さん。お疲れ様です」
「お疲れ。まだ異動にならなかったんだな」
「そうなんですよ。妻が妊娠中なので考慮してくれているみたいですね」
「ああ、そうだった。改めておめでとう」
話の内容からしてどうやら同業者、そして順風満帆な結婚をしているらしき彼を、添田さんが紹介してくれる。
「管制官の泉。大学にいた時からの、ひとつ下の後輩だ」
「はじめまして。泉です」