天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 流麗な雰囲気を漂わせて会釈した彼は、私たちの事務所の隣にそびえる管制塔で働いている人物だった。私はシャキッと背筋を伸ばして「はじめまして! 情報官の降旗です」と挨拶を返した。

 添田さんのひとつ下ということは三十七歳になるが、綺麗な顔立ちの泉さんは三十代前半に見える。眼鏡もスーツもめちゃくちゃ似合っていて、これで航空管制をしているのは絵になりすぎる。

 泉さんも食事会に参加するというので、添田さんを真ん中にして三人で歩き出した。彼はとても物腰の柔らかい人で、私にも気さくに話しかけてくれる。

「添田さんはやり手だから、下についてると勉強になるでしょう。学校にいた頃から、皆より頭ひとつ飛び出てるって有名だったんだよ」
「やっぱりそうだったんですね。本当に、アドバイスもわかりやすくて尊敬しています」

 ご機嫌取りなどではなく、心からそう言った。添田さんは表情を変えないが、泉さんは微笑んで頷く。

「普通の男より男前だしね。好きなタイプは力士でしたっけ」
「ああ。そこら辺の男たちはいろんな意味で軟弱すぎる」

 真顔で答える添田さんに、つい噴き出しそうになった。お相撲さんに抱き留められる彼女を想像すると、意外すぎて笑えてくる。

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