天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 そんな調子で仕事とプライベートの話を交えながらターミナルビルを歩いてしばらくした時、添田さんはコンビニの前で足を止めた。

「ちょっと寄っていく。先に行ってていいぞ」
「待ってますよ」

 泉さんが快く答え、添田さんはコンビニに入っていく。私も特に急いでいるわけではないので一緒に待っていようと思い、辺りを見回したその時。

「……あ」

 人混みの中でひと際異彩を放つ人物に目が留まり、思わず声を漏らした。堂々と歩いているその人は、四本線の制服に制帽を被ったパイロット──暁月さんだったから。

 今、帰ってきたんだ。ここ数日あまり天候はよくなかったけれど、問題なくフライトを終えられてよかった。

 二日ぶりに彼の姿を見てほっとすると同時に、隣を歩くひとりのCAに気づいて目を見張る。

 前髪を斜めに流してボブの髪を耳にかけた、顔立ちからして清楚な雰囲気が伝わってくる美人。

 暁月さんと楽しそうに話している彼女は、彼の制服の袖をちょいちょいと引っ張り、顔を近づけてなにかを耳打ちするような仕草を見せた。

 ……明らかに距離が近い。暁月さんも気を許したような笑みを浮かべているし、仲がよさそうなのは一目瞭然だ。彼女は他の人たちとは違うと直感する。

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