天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 さっさと聞けばいいのに、どうしてためらってしまうのだろう。彼のことを全部知った上で生きていきたいと思っていたのに。

 バックハグされたままもどかしさを抱いていると、話が途切れたところで暁月さんが問いかける。

「俺がいない間、拓朗からなにもされなかったか?」

 そういえば、すっかり城戸さんのことが頭から抜けていた。結婚した目的はそれなのだからいい傾向なのだが、代わりに頭の中を占めたのは喜ばしいものじゃないので複雑だ。

「はい、なにも。ただ、私たちが普通の結婚ではないって薄々感づいているみたいです」
「あいつ、そういうところ勘が鋭いからな。まあ想定内だけど」

 たいして気にしていない様子の暁月さんだが、意味深な視線をこちらに向ける。

「でも、つけ入る隙があると思われるのは癪だから、けん制しておこうか」
「けん制?」

 どういう意味だろうと頭にハテナマークを浮かべたのもつかの間、彼が私の首に顔を近づけてくる。同じシャンプーの香りが強くなると共に髪がくすぐり、首筋に唇が触れる。

「ひゃ……っ!」

 直後にチリッとした痛みを感じた。一瞬なにをされたのかわからず呆気に取られる私に、彼は不敵に口角を上げる。

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