天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 でも、見るだけならタダだ。やっぱり結婚指輪にも憧れはあるので、相づちを打ちながらうっとりと眺めていた時。

「結婚指輪、気に入った?」

 すっと隣にやってきた暁月さんが問いかけた。

 ひとりで指輪を見ていたのがバレてなんだか気恥ずかしいけれど、値段は置いておいて正直に答える。

「はい、好きなデザインだなと……」
「じゃあ買おう」
「えっ!?」

 即決で購入に向けて話を始めるものだから、スタッフさんが嬉々として奥へ下がったタイミングで慌てて彼を止める。

「ダメですよ、あんなお高いの!」
「婚約指輪は給料三カ月分ってよく言うだろう。それに比べたら」
「それはただ企業が考えたフレーズですよ!」

 しかもちょっと古いし……と心の中でツッコむも、彼の気持ちは揺るがないらしい。

 店内のテーブルに案内されてサクサクと話が進められ、指のサイズまで測られて、もう後には引けなくなる。

 本当にいいんだろうかと戸惑っていると、ふいに暁月さんが落ち着いた口調で語り出す。

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