天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「指輪って、相手を縛る象徴みたいであんまり好きじゃなかったんだけどね。母親が残していった唯一のものが指輪だったし」

 確かに、結婚指輪は所有の証のようなものでもあるだろう。じゃあなおさらどうして買うんですか、と口を挟もうとしたものの、彼は頬を緩めて「でも」と続ける。

「莉真がすごくいい顔して見てたから、自然にプレゼントしたくなった。受け取ってくれたら嬉しい」

 彼が優しい笑みを浮かべるので、じわじわと喜びが込み上げてきた。

 そんな風に言われたら、もうなにも反論できなくなる。ここは素直に甘えてしまおうか。

「……ありがとうございます。私は、結婚したら指輪はつけるものだと思っていたから憧れがあったんですけど、それをもらえること以上に暁月さんの気持ちが嬉しいです」

 口元をほころばせてお礼を言うと、彼も満足げにしていた。結婚に対する彼のイメージも少し変わってきていたらいいな。

 私にとってこの指輪は、ふたりで一緒に生きていく証だ。暁月さんからの初めてのプレゼント、いつまでも大事にしよう。

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