天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「……裏切ったりなんてしません。絶対に」

 一直線に目を見つめて断言した。視線を絡ませた彼は、ひと言では言い表せない複雑な笑みを見せ、食材を入れたバッグを持つ。

 あなたを苦しめるようなことも、後ろめたくなるような行いもしない。私がそういう人だと信じてくれているのは嬉しい。

 でも、少しは心配してほしいな……なんて思うのはわがままだろうか。この面倒くさい女心はどこまで主張していいものなんだろう。

 結婚指輪をプレゼントしてもらえて、自分が彼の特別な存在に近づけた気がしたのに、やっぱり一線を引かれているようにも感じる。

 空いているほうの手を再び握る。繋がっているのに言いようのない寂しさを覚えつつ、夕暮れの街へ足を踏み出した。


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