天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 制するように呼ばれても構わず饒舌に吐露し続けていたら、急に声を出せなくなった。キスで唇を塞がれて。

 ふたりきりの狭い箱の中、ちゅっと音を立てて唇が離れていく。丸くした私の目に、表情を引きしめた暁月さんが映る。

「ちょっと黙って」

 Sっ気のあるひと言と、私を見つめる熱い瞳にあっさり懐柔される。怒らせてしまっただろうかと身構えたのは一瞬で……。

「嫉妬も可愛いけど、君といる時に他の女のことなんて考えたくないから」

 予想外に甘く一途な言葉が聞こえてきて、心臓がドキンと大きく鳴った。

 直後にエレベーターの扉が開き、彼に腰を抱かれたまま部屋へ向かう。私の口からはすっかり文句も出なくなって、気分がふわふわしている。酔っているせいだけでなく、お互いの気持ちが重なったように感じるからだ。

 嫉妬していたのは私だけじゃない。暁月さんの矛盾した言動も、そのせいだと思えばしっくりくる。

 まだはっきりしたわけでもないのに……どうしよう、嬉しい。

 玄関に入ると自動的にダウンライトが灯り、真っ先に寝室へ連れられていく。これからなにをするのか察しても抵抗する気はなく、おとなしくベッドに腰を下ろした。

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