天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 薄暗い部屋の中、ジャケットを脱いだ暁月さんは隣に座り、私の髪を撫でて口を開く。

「拓朗たちが言ったのは概ね本当。でもそれは過去の話だ。俺は最初から、君に対しては他の誰とも違う感情を抱いていた」

 威圧感がなくなった声色で心の内を覗かせ始めた彼は、次いで葛藤するように眉根を寄せる。

「ただ、どんどん君を束縛したくてたまらなくなって、ふと怖くなった。縛りつけたら、莉真も俺の元から去っていってしまう気がして」

「それで、あえて私に干渉しない素振りを?」

「ああ……本当は、たとえ職場の飲み会だろうと、好きだった男がいるところになんて行かせたくなかった。俺の手の届く範囲にいてほしいし、誰にも触れさせたくない」

 次の瞬間、彼は我慢できなくなったように私を押し倒した。天井をバックに私を見下ろす切なくも情熱的な表情に、心臓がぎゅうっとわし掴みにされたような感覚を覚える。

 私が他の男性といるの、本音では嫌だったんだ。そう感じてくれていただけで嬉しい。

「莉真に会ってわかったよ。本当は俺もだいぶ独占欲が強いらしい。今も、君のすべてを暴いて、余すところなく俺のものにしてしまいたい」

 かすかな焦燥を滲ませ、やや荒っぽくネクタイを外す彼が扇情的すぎてくらくらする。

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