天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 望は静かに俺から顔を背け、まつ毛を伏せる。

「私は、あっくんの考えはきっと変えられないと思って諦めた。どうして莉真さんは、あんなに頑なだったあなたの気持ちをあっさり変えられたんだろう……」

 無念そうにこぼれた言葉で、彼女の想いはなんとなく伝わってきた。

 望はずっと前から近くにいて、女性の中では一番気を許せる人だった。しかし、莉真のように強烈に心を動かされるなにかがあったわけではない。こればっかりはどうしようもないことだ。

「彼女がなにか特別なことをしたわけじゃないんだ。自分を飾らず素直で、前向きな考え方をする彼女に、俺がとてつもなく惹かれただけ」

 正直に打ち明けると、望は一瞬目を見張った後、寂しそうに笑って頷いた。

「もう何年も前から、こうなることはわかりきっていたのにね……。逃げ続けていないで、もっと早くに言えばよかった」

 後悔を露わにした彼女だったが、軽く深呼吸をして意を決したように俺に向き直る。

「私は、あっくんが好き。学生時代からずっと、好きだったよ」

 望は初めて自分の想いをはっきりと口にした。とても綺麗な表情で。

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