天才パイロットは交際０日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
　ＣＡの夢を叶えるために父親を説得する力はあったのに、恋愛面ではとても消極的になる彼女。恋愛は自分ひとりの問題ではないからなのだろう。相手に気を遣いすぎてしまう、優しい性格なのだ。

　婚約者を決められ、それに対して反発できないのも、相手の男性が自分をとても気に入ってくれているのを感じるからに違いない。

　にもかかわらず、今思いのままに告白をしたのは、彼女にとって大きな一歩だ。結果をわかっていながら、覚悟して来たのだろう。

　俺も真摯に答えなければと、彼女の目をまっすぐ見つめ返す。

「ありがとう。望は大事な幼馴染だよ、いつまでも」

　直後、彼女の大きな瞳にみるみる涙が溜まり、いくつもの粒になってこぼれ落ちた。

　その姿が、ふと小学生の頃の望と重なる。意地悪な男子に構われて泣いていたのを、頭を撫でて慰めた時があった。でも今は、ハンカチを差し出すだけに留めておく。

　望も幸せになってほしい。そう願うことしかできないが、きっと彼女もこれから変わっていけるだろう。

　しばし涙を拭っていた彼女は、「ごめんね、付き合わせて」と言って顔を上げる。目も鼻の頭も赤くなっているが、表情はすっきりしているように見えた。

　涙が落ち着くと望は意味深に口角を上げ、さっぱりとした口調で言う。

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