天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「ちなみに、私が告白するって莉真さんも知ってるはずだから。今頃悶々としてるかもしれないわよ」
「は?」

 莉真も知っている? 一体なぜそんなことに……。

 眉根を寄せる俺に、望はいたずらっぽく微笑み、「ハンカチは今度返すね。また明日」と告げて歩き出す。背筋を伸ばし凛としていて、いつものCAの姿に戻っていた。

 そういえば昨日、望も一緒に飲んだと言っていたな。その時に話したのだろうか……と考えていた時、先ほどの電話で莉真が『の』と言いかけていたのを思い出す。

 あれはもしかして望の名前を言おうとしていた? 一緒にいるかどうかを確認したかったのかもしれない。

 莉真には悪いが、心配してくれているのは少々嬉しくて口元が緩む。今日はもう遅いし、家に帰ったらたっぷり甘やかせて安心させてあげよう。

 嫉妬も束縛も、ただただうっとうしい感情でしかなく、されて嬉しいものだなんて思いもしなかった。相手にとってもわずらわしいだけだろうと思っていたが、今はすっかり考えが変わった。

『全部、莉真さんのおかげ?』

 望の言葉と共に、莉真と出会った頃を思い返す。彼女が俺を変えたのは間違いないが、顔も知らない頃から彼女は特別な存在だった。

 今になってみれば、あの時すでに後戻りできないほど惹かれていたのかもしれない。


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