天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「そうなったら暁月さんは勉強に集中できなくなるだろうし、お義父様との関係も悪化しちゃいそうで嫌だったから。それに、子供がいない今のうちに異動しておくのもアリかも、と少し思ったのもあって」

 すべて打ち明けると、暁月さんは「そんなところまで考えていたのか」と納得し、私を包み込むようにして背中にぴたりとくっついた。

「人を思いやれる優しい莉真も大好きだけど、大事なことを忘れてる」
「なに?」
「君がそばにいれば、俺はこれ以上ないくらい幸せだし何倍も頑張れる。離れたほうがいい、なんてことはありえないんだよ」

 優しく諭すように言われ、胸が温かくなる。うん、と頷いてキスを交わし、これからもできる限り一緒にいようと心に誓った。

 軽い口づけが濃密になって理性が溶けてしまう前に、近い将来について話し合う。

「子供に関しては確かに悩みどころだけど、異動したとしてもその後どうなるかはわからないだろ。また遠いところに飛ばされたら困る」
「ですよね。子供ができたら異動を考慮するって会社は公言しているし、やっぱり二年以内に妊娠できたらベストかな。でも、今はまだふたりの時間を楽しんでいたい」
「そうだな、せめて一年くらいは」

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