天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
本能的テイクオフ
四月に入って数日、いよいよ東京への引っ越しを翌日に控えた今日、最後に茜とランチをすることにした。
ゴンさんや遠野くんとももちろん送別会をして盛り上がったけれど、やっぱり女子だけの時間もゆっくり取りたい。というわけで、市街地まで足を伸ばし、おしゃれなカフェでまったりしているところだ。
茜はカフェモカが入ったグラスを手にソファに背を預け、ちょっぴり羨ましそうに言う。
「私も聞きたかったなー、相良さんの無線。莉真だけに向けて特別なメッセージをくれるなんて贅沢すぎ!」
改めて言われると照れくさくて、私は黙々とランチプレートのラザニアを口に運ぶ。
最後の交信は事務所の人たちもばっちり聞いていて、後で散々冷やかされた。なにも知らず仕事をしていた茜は、後で話したらめちゃくちゃ興奮していたのだった。
この数日は引っ越し準備に追われていてあまり余韻に浸る暇もなかったのだが、彼の声を思い出すと胸がときめく。素直に嬉しかったから。
「ある意味、職権乱用かもだけどね……」
「それ言ったら、機内アナウンスでのプロポーズもアウトになっちゃうじゃん」
「あ、確かに。数年前にいたんだっけ、日本アビエーションでCAにプロポーズした機長が」
「超ロマンチックだよね~。ほんとに日本人かな!?」